てふてふ園

綴ります紡ぎます

縦横オーバードライブ

どうもこんにちは、親と社会から与えられた猶予の期限が迫ってきているてふてふです。

愛しい日々は泡のように消えてくとJUDY AND MARYYUKIちゃんが教えてくれましたが、まさにそんな感じで、長い長いと始まった時は思っていた二十二年間に終わりが近づいている。

そんな二十二年間の集大成、大学四年生の卒業旅行のことを撮ってきた写真を眺めて、記憶を反芻しながら綴っていきたいと思う。まあ旅の記録ですね。僕は忘れっぽいのでこうでもしておかないと後悔するってことに今更気づいたんです。二十年かかりました。

 

 

――旅行二日前、僕はテキストを握りしめ、両目を充血させていた。

 

と、いうのも色々な理由が重なり、ある試験の日程が旅行前日になってしまったからだ。もう少しあとに受けようと余裕をぶっこいていた僕は、試験二日前だというのにテキストを一周もしていない状況だった。気が気じゃなかった。僕は徹夜を決意した。

 

 

――旅行前日、僕は起きていた、日の出づる様を眺めていた。

 

テキストを握りしめ。おそらく机に二十七時間ほど向かっていただろう。僕にとっては快挙だ。テキスト問題集共に一周半程はできたうえ、問題集の付録の模擬試験にも受かったため、これは試験に合格したという根拠の無い自信に溢れた朝であった。

試験後はスーツを買いに行く予定であったので、息抜きにどんなスーツを選べばいいのかを調べたりし、時間になったので試験会場へと向かった。

簡単な試験の説明を受け、試験に望む。なに、試験前日にテキストが終わったとはいえ、毎日、一日置き、いや気が向いたら勉強していたのだ。一夜漬けというわけではない。受かるだろう。と、高をくくっていた。

 

 

 

「え、分からない」

 

 

一問目からそう心のなかで必要のない独り言を呟く。模擬試験と形式が違った。まあまあ、この先解ける問題に溢れているだろう、模擬試験に受かったしね。っていう軽い気持ちで解答していきリズムを掴んでいこうと思ったが、一向にその時は現れることなく、試験終了。僕は模擬試験を恨んだ。

そのままもぬけの殻でスーツを買いに洋服の青山に行き、猫背を馬鹿にされ、帰宅し荷造りをした。

 

 

 

あ、試験は受かってました☆ハハッ

 

 

 

――旅行一日目、眠い目をこすっていた。

 

前日徹夜していたのにもかかわらず、ほとんど眠れなかったわけだ。僕は昔から遠足前日などはワクワクして眠れないたちで、現在も治っていない。全く小学生かってんだ。未だにニキビが収まらないわけだ。思春期が終わらない。

僕はスーツケースを引っ張り最寄り駅に向かう。道中特に問題なく友達と合流、空港までのバスで睡眠、飛行機で爆睡とあっという間に目的地に到着。鹿児島だ。空港前で記念写真を撮った。

鹿児島空港の前には足湯がある。「ああ、空港の前に足湯があるんだすごいな」と関心していた僕の目の端、いや、完全に中心を捉えていた。本能だった。

 

 

 

パンツがガッツリ見えた。おばさんの。すごいへこんだ。

 

 

足湯のうえ、彼女が身に付けていたものはスカートではなく、ショートパンツだった。そのため、警戒心が薄れていたのであろう。脚とショーパンの隙間からお尻を中継して、ベルトで締め付けている部分まで見えてしまった。

一人で抱えるには余りにも重すぎる事実だったので、すぐに周りの友人に漏らした。すると、一人の子に「おばさんじゃないよ!あれはお姉さんだったよ!」と、励まされた。だから僕の記憶の上ではお姉さんのパンツを見たことになっている。因みに目撃したのは一瞬のことで、その後彼女のご尊顔をじっくり確認する勇気は僕にはなかった。

一日目は観光する時間は無かったのですぐに宿に向かった。

宿では温泉を味わい、ビュッフェ(最近ではこう呼ぶんですね。僕は未だにバイキングだと思っていますよ。こういう業界の名前変えてやれトレンドだ、やれ最新だ、流行だというのにも辟易としますね。デザートをスイーツと呼んだりとか)も楽しんだ。

「寝不足だし、今日はガッツリ眠れちゃうな~」と、床につく。久し振りに友人に会ったなとか、そもそも春休みだから人に会ってないなとか思いながら。

そしたら午前二時ぐらいに地震が来るんですよね。

もうね、旅行先で地震来るとは思わないでしょ。たとえそれが震度二の弱い地震であっても。ま、まあ弱い地震だし?別に怖くないし?でも一応ニュース確認してみよっかな~なんて確認してみれば、四国を中心として震度五強なんてね。滅茶苦茶強い地震じゃない。その後すぐに癖で2ちゃんを見てしまい、南海トラフ地震がもうじき起きそうだとか、3.11の二日前とその日の天気図が似ているだとかの情報(オカ板からの引用)を見てしまった。周りはとっくに眠りに落ちていて、「おい、旅行中に大地震かよ」「まあ旅行している間に死ねるなんて幸せかもな」なんて一人で布団で震えていた。そのため、また寝不足である。

ちなみに二日後なにも起きず、僕はこうして無事に帰ってきて今ブログを書いている。

 

 

――旅行二日目、眠い目をこすっていた。

 

準備を済ませ、早速桜島へと向かった。レンタカー(僕はこの旅行中一度も運転をしていない)ごとフェリーに乗り込み、さあ行くぞ!抜錨だ!と勇んでいるとき、ある感覚が身体中を駆け巡る。

 

 

 

「うんこがしたい」

 

 

朝グダグダしていたくせに、温泉には入りたがったため、トイレにいく時間がなかったのだ。慌てて友人にお手洗いの位置を聞き、厠に駆け込む。デニムとパンツをいっぺんにおろし便座に腰掛ける。

 

「よかった間に合った」

 

と、安堵していたら、今度はうんこがでないのである。お前まで安心しているんじゃねえ。さっさと顔を見せろ、水面が波もたてず待ちわびているぜ。なんてしている内に、便座から振動が、明らかに船底から何かが駆動している衝撃が伝わってきたのであった。

 

 

 

うんこしているうちに出航していた。

 

 

こんなこと一人で抱えていられるわけもなく、友人に報告した。「声が大きい」と一蹴。

「あら、あの子。うんこしてて出航の瞬間に立ち会えなかったのね。かわいそう」なんて周りの乗客から視線を集めることもない。鹿児島の人間も案外冷たいのである。他人に関心を持たないのは都会の人間だけではないということを身に刻んだ瞬間であった。

そうこうしているうちに桜島に到着。

「うおーこれが桜島か!あれが噴火を繰り返している山か!高いぜ大きいぜ!」

なんてことはなく、曇り空で島の全貌は一望できず。残念。桜島を軽くドライブし、観光も終え、いよいよ熊本へ。

そうなんです。今回の旅行は一日一県九州を北上し、観光していこうという広く浅くプランなのです。すごい楽しかったのですが、これの良くないところは、県の一部しか見ていないくせにその県のことを知った気になることなんですよね。まあ、それは置いておいて、熊本へ向かいました。

熊本の貸別荘(今回の旅行の計画の立案、施設の予約に僕は一切関わっていない)に向かうわけだけど、熊本って雪降るんですね。貸別荘に向かう道がことごとくチェーン規制でいつまでたっても辿り着けない。三回も迂回してようやく到着。

いい別荘でした。

取り敢えず、日も暮れていたので、ご飯処を探しに行ったが、まあ見つからない。仕方なく、途中で見付けたデイリーヤマザキでレトルトなどの食材を買い、貸別荘で調理することになった。

冷凍庫を物色していると、コンビニには似つかわしくない精肉が。バーコードも付いている。これには僕も大歓喜。一応レジのばあさんに確認を取ってみると、

 

 

 

「ああ、それうちのだわ」

 

 

だと思ったよ。なんかスーパーのそれっぽいバーコードだったもん。私物を陳列棚に置いとくなクソが。

そのまま買い物を進めていき、コンビニなのにかご四つ分の商品、店内にはばあさん一人。まあ、そのばあさんがレジ打ち遅いのなんの相対的に袋詰めも遅いから、レジの中に入って袋詰めを手伝うことに。

そしたら、山奥のコンビニだけど、客来るのね。卵とハム持って並んでるの。レジにはばあさん一人。僕達の大量の商品は精算前。

そしたらなにをとち狂ったかばあさんが、「レジやって」って言うの。周りを見渡しても店員はばあさん一人。なんかね、どうやら僕に向かっていってるらしい。僕は思ったね。

 

「このばばあ何故僕が某スーパーでチェッカーをやっていたと知っている?」

 

って。まあそんなこと知っているわけはなく、このばばあ若者なら何でも機械を使いこなせると思っているに違いない、そう僕は思った。ここは若者代表としてこのばばあに若者の力を認めさせないといけないと思ったね。

そして僕は二番レジに立つ。慣れた手つきでハムを二つスキャン。「たけえ、他で買えよ」なんて心のなかで呟きながら、卵に手をかける。読み込まない。卵のバーコードを読み込まない。

 

「ばあさん!卵!バーコード読まないよ!」

「卵はね!290円!食品!」

 

実に不親切な説明である。

しかし、この僕、駅前の激務のスーパーでチェッカーをやっていた経験と柔軟な思考力を活かし、この課題を難なくクリア。客のばあさんに、

「本当にあってるぅ?」

なんて冷やかしを受けるも、レシートを見せながらの相互の確認で理解を得る。この一連の動作、実に冷静であった。その後、もう一人鮮やかに接客し、コンビニをあとにする。

僕がレジ打ちをしている様子を友人が写真に撮ってくれていたので、後で確認してみたら、どうみてもレジの金を盗んでいるようにしか見えなかった。私服だし、リュック背負ったまんまだし、目つき悪いし。目つきは関係ないだろ!生まれつきだよ!

なんて不用心なやつだ、この不用心ばばあと毒づきながら帰路につく。

 

 

――旅行三日目、眠い目をこすっていた。いや、もういいよって感じですよね。僕、旅行中もわくわくして眠れないたちなんです。修学旅行とか「みんなまだ起きてるぅ?もう寝たかなぁ……」とか言うタイプなんです。

 

この日は大分に行く予定だったので早々と出発の準備をした。出発前に別荘の前で大家さんに集合写真を撮ってもらった。そしたら、徐ろに自分の携帯を取り出して僕達の写真を撮ってるの。大家曰く「この写真をじゃらんのブログに載せて、Facebookで共有する」とのこと。

このばあさんSNSを使いこなしてやがる。そういえば、貸別荘のオーディオは充実していたし、ルンバまであった。なんてハイテクな野郎だ。ハイテクばばあだ、と脳内でそっとこぼした。

 

と、いうわけで行ってきました九重夢大吊橋!

この九重夢大吊橋は日本で一番高くて長い吊り橋らしい。まあ僕そういうの平気だし?写真で見る限りたいしたことないし?軽く渡っちゃう?とか思っていたんですけど、マジで怖いですね。何あれ。どうやって吊ったの。なんで足元すけさせたの。自分がこんなに臆病なやつだとは思わなかったぜ。一緒に来てた子に若干馬鹿にされたけど違う。愛すべきたくさんの人たちが僕を臆病者にするってMr.Childrenの櫻井くんも言っていた。守るものが増えすぎたんだよ。

とはいえ、未だに目指していたジャンプの主人公のような勇敢な人間にはなれそうにもないな。引導を渡してくれてありがとう九重夢大吊橋、もう二度と来ない。

橋の向こう側で唐揚げを売っているばあさんの話や、バーにすねをぶつける事件などもあったが割愛する。

その後地獄巡りでプリンや茹で卵を食べ、場違いのホテルで海岸沿いの露天風呂と、料理を頂いて、駐車場の狭い貸別荘に泊まった。この貸別荘なんと露天風呂が付いているハイスペック貸別荘で超オススメ、是非泊まってください。因みにお湯がたまるのに一時間強かかるそう。

 

 

――旅行最終日、福岡へ。

 

最終日ということで時間がないので、朝早く出発。十時半からやっているもつ鍋屋に滑り込んで、ランチセットを頼む。このランチ、もつ鍋の他に馬刺しや明太子、その他諸々が付いてくる。このもつ鍋や馬刺しがとても美味しく、美味しかった反面、僕が今まで食べてきたもつや馬刺しが偽物だったことに気付かされるという諸刃の刃であった。

次は太宰府へ。太宰府天満宮には学業の神様が祀られているということで、学業の神様に学生生活、ひいては学業の終了を報告しに行くという、なんともシュールな参拝になってしまった。

空港で博多ラーメンを食べ、水炊きが食べられなかった後悔をトランクにしまい、搭乗手続きを済ませ、家路につく。

帰りの電車でこの四日間の九州旅行を思い返す。エレベーターでボタンの前に居るのに開閉ボタンを押さない非常識ばばあ、客にレジ金触らす無用心ばばあ、SNSやその他電化製品を使いこなすハイテクばばあ、からあげ揚げてるからあげばばあ、ばばあばっかじゃねえか!インパクト強すぎるんだよ!もういいよ!

 

 

 

こうして僕の春休みの一大イベントが終わった。あとに控えた卒業式が学生生活に終わりを告げる。

日中はコートが要らないくらいに暖かくなってきた。春だ。来月から新しい日々が、めまぐるしい日々が始まる。

私服を脱ぎさり、スーツを身に纏っていく。

大好きだったあの教室にも、何度も行った定食屋にも、もう行くことはないだろう。

毎週、毎日会っていた友人にも会う機会はめっきり減って、もう二度と会うことはないかもしれない。

愛しい日々は泡のように消えていった。けれどこの日々は僕の中で確かな形となって残っている。